
依頼者×制作者 特別対談
一本の映像で、
終わらせない理由。
競走馬は、現役を退いたあと、
どんな日々を送っているのだろう。
引退競走馬たちの新しい仕事を紹介する
映像シリーズ『セカンドキャリウマ』。
JRAシステムサービス株式会社様(以下JRASS)と
Creem Panは、なぜこの企画を始め、
何を大切にしながら作品を重ねてきたのか。
JRASSの大曽根さんと羽鳥さん、
制作を担うCreem Pan代表の平林。
これまでの作品や撮影現場を振り返りながら、
同シリーズができるまでの舞台裏を語った。

Profile

大曽根さん
JRAシステムサービス株式会社
デジタルコンテンツ事業部
新サービス推進課 課長
デジタルコンテンツ事業部 新サービス推進課の課長として、競馬ファン向けの新規BtoCサービスの企画・開発に携わる。『セカンドキャリウマ』では、企画の提案や予算確保など、プロジェクト推進に向けた社内調整を担当。自身も多くの現場に帯同する。好きな馬はトロットサンダー。

羽鳥さん
JRAシステムサービス株式会社
デジタルコンテンツ事業部
JRA-VAN運用課
JRA-VANサービスの運用やコンテンツの企画立案に携わる。『セカンドキャリウマ』では、主担当者として、競馬ファンの目線を持った企画検討をはじめ、取材する馬や施設・職業を選定。映像公開時にはSNSを中心とした告知業務も担当している。好きな馬はヨカヨカ。

平林 健一
株式会社Creem Pan
代表取締役
映画監督・作家
Creem Panの制作責任者として、『セカンドキャリウマ』の構成・演出を中心に、取材対象の提案から撮影・編集までシリーズ全体を統括。JRAをはじめとする競馬関連の広告コンテンツを手がける一方、引退競走馬を題材とした映画制作や執筆にも取り組む。好きな馬はディープインパクト。

一度では伝えきれない。
だから、
シリーズで。


平林(以下平):さかのぼると、2025年の5月に、初めてこのシリーズ企画のご相談をいただきました。
羽鳥(以下羽):はい。私自身、この企画を考え始めたときに、「引退競走馬には、そもそもどんなセカンドキャリアがあるんだろう」と、知らないことがたくさんありました。競馬ファンの中にも、同じように知らない方は多いんじゃないかなと思ったのが企画を考えたきっかけです。 一つのキャリアだけを紹介して終わるのではなく、いろいろな馬の“その後”を積み重ねていくことで、「引退したあとには、こんなにいろいろな道があるんだ」と分かるものにしたい。それで、単発ではなくシリーズとして続けていくことになりました。
大曽根(以下大):会社としても、引退競走馬について情報を発信していくことは、大切なテーマの一つでした。JRASSでは、SDGsへの取り組みとして5つのマテリアリティ(重要課題)を設けていて、その一つが「馬の福祉の充実」です。 引退競走馬の馬術大会への支援や、功労馬への支援など、直接的な取り組みも行っています。ただ、企業としてできることにはどうしても限りがある。 だから、競馬ファンの皆さんに引退競走馬のことを知っていただくことも大切だと考え、情報発信をしよう、というのがスタートでした。
平:そう考えると、一つの映像に全部を詰め込むより、それぞれのキャリアを一本ずつきちんと紹介していく方が伝えられるものもありますよね。
羽:そうですね。単発だと、どうしても紹介できるものに限りがありますから。
大:時間が経って作品が増えてくると、一つを見た人が「ほかの回も見てみよう」となって、点が線につながっていくのもシリーズの面白さですよね。 実際、過去の作品も、公開から月日が経った今なお、再生数が伸びています。
平:出演者の方々の中には、お声がけする前から既に『セカンドキャリウマ』を見てくださっている方もいますよね。
大:そうですね。業界内では結構知っていただいているのかもしれません。
平:そうやって認知度が高まることも、続けてきたからこそだと思います。振り返ればシリーズ第一弾は、タレント・アドマイヤジャパン編でした。
羽:まず、撮影前から、アドマイヤジャパンがYogiboのクッションで寝ている映像は知っていました。すごく有名でしたし、「どこかで見たことがある」という方も多いと思います。 実際に現地で取材して印象的だったのは、馬と人との距離の近さでしたね。菊花賞2着という大きな実績を残した馬が、今はファンと触れ合いながら暮らしている。「競走馬には、こんな未来もあるんだ」と、目の前で見たからこその驚きがありました。
平:そうですね。現地へ行って初めて分かることってありますよね。
羽:そうなんです。見たり、説明してもらったりして初めて分かることもあると思います。 私自身がそうだったので、普段は馬券を中心に競馬を楽しんでいる方が見ても、「こんな世界があるんだ」と驚いてもらえるんじゃないかなと思いました。 完成した映像も、撮影で知ったことがすごく分かりやすくまとまっていて、「いい映像になったな」と思いましたね。
大:Creem Panさんとは、以前からお付き合いがあったので、映像の綺麗さやクオリティの高さは期待していました。完成したものは期待通りというか、期待以上でしたね。
平:ありがとうございます。作る側としてもシリーズだからこそできたことは多いと思うんですよね。 もちろん、一本一本に全力を注ぐんですけど、完成して振り返ると、「もっとこう撮れたな」とか、「次はこういう見せ方を試したい」と必ず出てくる。 SNSの反応を見たり、JRASSさんからいただいた意見を次に反映したりしながら、少しずつブラッシュアップできるのは、シリーズ制作ならではだと思っています。
羽:企画する側としても、作品を重ねる中で出会えるものがあります。 美浦ホースクラブさんの馬耕も、最初から予定していたものではなくて、この企画を進めていく中で知った取り組みでした。その時々で生まれる新たなセカンドキャリアを紹介できるのも、このシリーズならではだと思います。
平:そういう発見を拾い上げるためにも、常にアンテナを張っておかないといけないですよね。
羽:そうですね。私たちも「次はどんなセカンドキャリアを紹介するか」を考えていますが、取材する馬を選ぶ段階では、長年、引退競走馬を含めた馬事関係の制作経験が豊富なCreem Panさんだからこそ知る情報を頼りにしているところがあります。 今どんな取り組みが始まっているのか、どんな馬がどこで活躍しているのか。そうした最前線の情報を共有いただきながら、お互いに企画を考え、次の一本につなげていけたらと思っています。
大:そうですね。今後は紹介する職種をもっと広げていきたいですね。同じ職種でも、団体によって考え方や方針は違うと思いますし、そのバリエーションも見せていきたい。 そのうえで、テーマが似てきたとしても、その馬やその人ならではの面白さをどう見せるのか。そこはCreem Panさんに、これからも期待しています(笑)。
平:さらりと、なかなか難しいことを仰いますね(笑)。



繊細なテーマだからこそ
試される
“伝え方”


羽:引退競走馬というテーマを扱ううえでは、やっぱり繊細な部分もあります。最初は、映像を作るだけではなくて、JRA-VANの競走馬プロフィールから現在の繋養地につなげるような案もあったんです。ただ、施設ごとの事情もありますし、見学する側のマナーの問題もある。馬なので、当然ずっと同じ状況が続くわけでもありません。
平:だからこそ、支援そのものを促すというより、その一つ前の段階として、情報を届けるということでしょうか。
大:おっしゃる通りです。せっかく「何かしたい」と思っても、情報や知識が十分でなければ、支援する側と現場との間にすれ違いが生まれてしまうこともあります。 まずは、正しい情報を届け、知ってもらうことが大切だと思っています。
羽:個人的には、どの馬を応援するのか、どんな形で関わるのかは一人ひとり違っていいと思っています。まず入口をつくることが、この企画の役割なのかなと。
平:その「入口」という考え方は、最初の打ち合わせから明確でしたよね。Creem Panから当初出した案は、もう少しシックというか、重厚感のあるドキュメンタリー寄りでした。
羽:そうですね。企画書の文言も変えていただいた記憶があります。深刻なものとして構えるのではなく、もっと楽しみながら入っていけるものにしたい、というお話をしました。
平:はい。それを受けて、実写のみならずCGアニメーションを多用する演出にして、デザイン面でもできるだけ明るい色を採用しました。ナレーションも柔らかい文体を女性に優しく読んでもらうようにしたりと、現在のポップなデザインや文言の雰囲気へと調整していきました。
大:今思えば、あの明るくてかわいい世界観が、競馬ファンに知ってもらうきっかけとして、すごく合っていたんだと思います。
平:実際、SNSでも「デザインがかわいい」という反応があって、制作の励みになっています。
大:それと、私が大事にしたいと思っているのは、引退競走馬だけではなくて、その馬のパートナーであるホースマンにも光が当たることです。 取材先の方が、どんな思いで馬と向き合っているのか。インタビューを聞いていると、そこから勉強させてもらうことも多いです。
平:その話で言いますと、僕は相馬野馬追で取材したお父さんがすごく印象に残っています。 飾らない感じで、「家族だから」「かわいいから飼ってるんだ」ということを話していました。
羽:私はそれまで、引退競走馬って、乗馬だったり何かの仕事だったり、何かしら“役割”がないといけないのかなと思っていたんです。でも、「かわいいから一緒に暮らしている」という形もあるんだなって。
平:そういう何気ない関わり方の中にも、新しい発見がありますよね。 では最後に、今後『セカンドキャリウマ』をどんなふうに広げていきたいですか?
羽:これから少し広げていきたいのが、映像を見たあとの部分です。「この馬に会ってみたい」と思ったときに、どうすれば会えるのか。施設によってはいつでも見学できるところもありますし、イベントの日なら会える馬もいます。
大:確かに、そうした情報を届けるメルマガやLINEがあっても面白いですよね。興味を持った人に新しい情報が届く仕組みなら、そのあとも馬を追いかけてもらえるかもしれない。
平:そうですね。「もっと知りたい」「実際に会ってみたい」と思えるきっかけを増やせるシリーズを目指して、これからも頑張ります!











